最終更新日 2022/06/05

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104話 ジャム工場見学

12月11日(水曜日)

今日は、先月、王都近郊に開設されたジャム工場を見学に行く事になっている。

これは、9月27日に闘技大会の賞品を依頼された時に、
新しい仕事場として、国の果物をジャムにする仕事はどうかと提案したのだ。

ソアリスさんは、果物に関しては、収穫量の減りが少ないので、良いのではないかと
賛成してくれ、国王様も賛成してくれた。

その後、フィンテルから職人を呼んで、一ヶ月で完成し、
口減らしで困っている人限定で募集して、準備が整ったのが、11月4日で魔族襲来の翌日。

そうして、開設してから一ヶ月になるので、
ソアリスさんから様子見に行って欲しいと言われたので、行く事になった。

材料は、国内の果物と 〈ユグドラシル〉にある果物を使用し、
偏りが無い様に混ぜ合わせて、ジャムにして販売する。

売上金は、工場維持費と賃金になる。

ジャム工場前

そして、今、僕とユヅキの目の前には、大きな建物が4棟建っている。

他のメンバーは、今日はする事があるので、僕とユヅキになった。

「うわぁ。すごいですね。大きいとは聞いていましたけど、ここまでとは思いませんでした。」

「ははは(苦笑)僕もだよ。さて、入ってみようか。」

予め、伝えてあったので、普通に通してくれ、
案内人も用意してくれた様でありがたい。

「コーヤさん。私はミユキと言います。私達を助けてくれてありがとうございます。(お辞儀)

話に聞くと、コーヤさんの発案との事。

奴隷から開放してくれて、それに、仕事場を作ってくれて感謝しています。」

「それは良かったです。確か、稲の方は、事業が縮小して、
ジャム工場に人員をさいたと聞いていますが。」

「はい。私も稲の方で仕事していたんですが、肥料の研究など、特殊な仕事は別として、
一段落もして、多くの人がいなくても良い状態になりました。

それで、また、逆戻りになってしまうのかと、びくびくしていたんですが、
新たにジャム工場を開く事になって、人員が必要だからそちらに行って欲しいと言われました。

私を含めた移動組は、ほっとしたんです。」

「なるほど。ミユキさん、こちらの工場4棟ありましたけど、
何人で仕事しているんですか?」

「現在は、この棟のみの稼働で、裏の方には美味しいジャムを作るための研究所があります。

1つの棟では、100人が働いています。そして、10人の班で一種類のジャムを作ります。

売れ行きによっては、人数の変動がありますが、基本はその様になっています。

種類は、りんご・いちご・オレンジ・ブルーベリー・あんず・ラズベリー・
ハスカップ・レモン・クランベリー・桃の10種類です。

今はコーヤさんから提供してくれた果物となっています。」

ミユキさんが、丁寧に説明してくれた。

「あれ?でも、稼働当時は提供していないから、
国の果物を使うと言っていたと思うんですが。」

ミユキさんは苦笑しつつ、質問に答えてくれた。

「はい。確かにその予定でした。しかし、品質が良くなかったんです。」

「あぁ。なるほど。美味しくない素材を使ってジャムにしても、売れないか。」

「そうなんです。もちろん、輸送には魔法袋を使っていますから、腐る事はありません。

しかし、到着した果物をジャムにしても、イマイチなので、色々と調べると、
水分が少なかったり、栄養が少なかったりして、ほとんどが品質が1でした。

そんな時に、コーヤさんから果物を贈って貰って、大変感謝しています。」

「確かに、収穫量はあまり減っていないとは言っていたけど、
中身の状態までは、なかなか、全部調べるのは大変か。

じゃぁ。作っている所を見せて貰っても良いですか?」

「はい。案内します。」

今はストック分を作っている為か、10人で煮詰めから瓶詰めまでしていた。

ところが、最後の部屋に行くと、問題が起こっていた。

りんごジャム部屋

9人はきちんと机に座って、瓶詰め作業をしていたが、
1人だけ床に座って、作業をしていた。

リーダーの人に聞くと、この人は工場建設へ資本提供している家の跡取りらしい。

開設当初から、この様な態度で、何度言っても聞かないらしい。

しかも、するべき事を全て終え、状況確認する為に別の事をしている人を見つけると、
時間内なのに自分の方を手伝えと言って来て、ほとほと、困ってしまっていると言っていた。

ちなみに、自分の分担分は、時間内であるなら当人が行い、
もし、手間取って遅れそうな時は、善意で手伝うのは問題がない。

しかし、この跡取りの様に、手伝えと命令口調は、問題行動だ。

僕は、天狗になっている跡取りの方に歩いて行き、話しかけた。

「すみません。床に座りながらだと、品質が落ちるので、
きちんと皆さんを見習って、イスに座って机で作業して下さい。」

「はぁ?僕はきちんと仕事をしているだけだけど?」

「その仕事内容がダメだと言っているんです。」

「ほう。僕にその様な態度をして、良いと思っているのか?

僕の父親は、この工場を建設するのにお金を出しているんだぞ?」

相手は、ドヤ顔をしているが、僕からしたら、どうでも良い。

「そうですか。でも、だから?何ですか?
建設費用を出しただけで、勝手な行動をするのならば、今すぐに、建設費用はお返しします。

ですので、これからお父さんを呼びますね。

ミユキさん。この方のお父さんをここに呼んで下さい。」

僕は、連絡先を知らないので、ミユキさんにお願いした。

「はい。(部屋を出て行く)」

「なっ!ちょっ!何を考えているんだ?それに、お前にその様な権限があるのか!」

「権限ですか?この工場を国王様にお願いしたのは僕ですよ?
それに、あなたが作っているジャムの原料を提供したのも僕です。

あと、あなたが、作ったジャムは買い取って貰います。

先程、鑑定で調べましたが、あなたのだけ、最低ランクでしたし、雑菌もありました。
そのため、売り物にはなりませんから、引き取って貰います。」

「くっ!」

相手は、何も言えず、唇を噛んでいるだけだった。

10分後に父親が到着した。

「申し訳ありません!!!!」

父親は、到着するとすぐに頭を下げた。

「父さん!なんで、そんな簡単に頭を下げるんだ!」

「ばかか!!お前のその態度が全てを物語っているだろう!

家は交易だけでなく、卸業者でもあるんだ。

その会社の中で、不摂生な事をしていたら、あっという間に潰れてしまうんだ!

それにだ、ここのジャムは今後、特産品になるかも知れない。

だから、資金提供して、少しでも多く仕入れるようにしたのに。お前は!」

父親の方は、きちんと将来を見据えていて、高印象だ。

「すみません。僕は、この工場を提案したコーヤと言います。

先程、息子さんと話ししましたら、父親が建設費用出していると、
ドヤ顔していましたので、建設費用をお返ししようと思って来て貰いました。」

「なっ!!あなたがコーヤさんですか!最近、クラン《翆の泉》と取引させて戴きまして、
なかなかに有用なアイテムが多く、助かっています(一礼)」

「という事は、イオさんが僕の事を?」

「ええ。特にここ数ヶ月、山賊が多く出たり、動物も以前より凶暴化しています。

なので、安全に交易する為にも、なにか無いかと、考えていましたら、
クラン《翆の泉》の話が入って来ました。

イオというクランマスターに聞くと、コーヤという人が作ったと話してくれました。

一度お礼をしたいと思っていたんです。(お辞儀)」

父親は、興奮したように、一気に話をした。

「そうですか。

そうなると、建設費用をお返しするのは失礼かも知れませんが、
この方は、自分のしている事を認識していません。

しょうがないのでお返ししますね。金額を教えて下さい。」

「その事は、無かった事にして下さい(深々と頭を下げる)

それをされると、信頼が落ちてしまい、仕事が出来なくなってしまいます。

このばかは、監視を付け、家の雑用をして貰います。ですので、どうか!!」

「なっ!!!父さん!!!何を言うんだ!!」

僕も、父親の覚悟を認めたので、返却を止める事にした。

「分かりました。その様な覚悟があるのでしたら、返却の件は無かった事にします。

ですが、息子さんがおかしな事をしないように、首に縄を付けて監視していて下さい。

今回の事も、食べ物を無下に扱うのが、許せなかったので。」

「はい!!!もちろんです!!!ほら!!帰るぞ!!!!」

その後、息子は渋々荷物をまとめ、
自分が適当に作ったジャムを買い取り、その場を後にした。

「さて、これで、大丈夫だと思いますが、
食品を扱っている事を改めて、考えるようにして下さい。」

「もちろんです。ありがとうございました(お辞儀)」

この後、僕達は見学が終わったので、拠点へと帰った。

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